子どもと親の学びを生み出す発達資産としての生活体験を育む地域家庭教育支援

本研究の紹介

 少子化や育児の孤立化が指摘されるようになってかなりの年月が経過しましたが,いまだにその問題状況が改善する兆しは見られません。確かに,子育て・家庭教育支援の取り組みが制度化されたことによって,親子で参加する場や相談する機会は生まれましたが,あいかわらず子育てに関する不幸な事件は起き,また子育て家庭における貧困の問題など,新しい問題状況も生まれてくるなど,子どもや子育て家庭を取り巻く環境はより一層厳しさを増してきているようです。
 そこで,この共同研究は,幼児期から学童期の子どもとその保護者の日常生活の状況や子育てに関する意識を明らかにすることで,子育てに関する親に向けた支援や地域社会のサポートについて提言することを目指したものです。

「生活体験」と「発達資産」

 特に,この研究では,「生活体験」と「発達資産」というキーワードに着目しています。それは,子どもの豊かな育ちを生み出すためには,子どもや親を取り巻く環境がよい良いものとなるとともに,その環境を活用して,子どもは豊かな体験を積み重ねることが大切であると考えているからです。
 また,子育て中の親も,忙しさや孤独感,子育てに関する迷いや不安を抱きつつも,自身の子育てを振り返る中で,「親が親として成長できる」学びの機会と「子どもの育ちを共に喜び合う」関係づくりも求められます。
  こうした関心の中で,趣旨に賛同いただいた幼稚園・保育所等ならびにそこに就園する子どもや保護者の方々のご協力のもと,現代におけるより良い子育てのあり方のヒントを探していきたいと思っています。

研究目的

 本研究は,幼児期から学童期の子どもと保護者を対象に,①子育て支援・家庭教育支援の教育学的位相,②保護者の養育力育成や地域における集団的サポートに向けた教育基盤形成の教育的要素について,実践事例をもとに考察を試みる。本研究では,教育・保育・子育て支援の3領域を「地域家庭教育支援」という同一視点のもと,教育基盤形成について考察する。
 本研究においては,Ⅰ.原理的理論研究,Ⅱ.乳幼児の保護者を対象とした質問紙調査,Ⅲ.地域家庭教育支援の実践分析調査により,子どもの発達と親の学びを育む発達資産としての生活体験の意義と,学びを支える「地域家庭教育支援」という新たな家庭教育・子育ての構想・提起を図る。特に,実践分析では生活体験を重視した保育・子育て支援を展開する保育所等を対象に,a)家庭教育・子育て支援に関する参与観察・エピソード分析とb)保育者に対する聞き取り調査を実施する。

© 子どもと親の学びを生み出す発達資産としての生活体験を育む「地域家庭教育支援」

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