子どもと親の学びを生み出す発達資産としての生活体験を育む地域家庭教育支援

調査概要

 本研究は,幼児期から学童期の子どもと保護者を対象に,①子育て支援・家庭教育支援の教育学的位相,②保護者の養育力育成や地域における集団的サポートに向けた教育基盤形成の教育的要素について,実践事例をもとに考察を試みる。特に,家庭教育や子育てに関する課題を解決するためには,当事者を支えるための1)家庭・学校・地域の連携による地域基盤の形成と,2)学習内容としての生活知の自覚化が重要との認識から,学びや発達を支える「地域家庭教育支援」という概念のもと,多様化する子育て家庭を支える地域支援について実証的に研究を進める。
 本研究では,これまで政策・研究ともに異なった領域として扱われていた教育・保育・子育て支援の3領域を「地域家庭教育支援」という同一視点のもと,Ⅰ.原理的理論研究,Ⅱ.乳幼児の保護者を対象の質問紙調査,Ⅲ.地域家庭教育支援の実践分析調査により考察する。

発達資産とは

 本研究において着目する研究視点が「発達資産」である。 発達資産(Developmental Assets)とは,「青少年の教育や健康面でのよりよい発達をうながす環境的および内面的な諸力(strengths)」(Benson,P.)と定義され,発達段階に応じた形成が望ましいとされる資産をさす。1990年に発達資産論を提唱したSearch Instituteは,「外的資産(external assets)」としての「環境的諸力」を「青少年の発達に影響を及ぼす家庭・学校・近隣地域などの場やそれぞれの場を構成する人(家族,学校教員,仲間,近隣地域の大人)などの外的な環境」,「内的資産(internal assets)」としての「内面的諸力」を「青少年の心理的な発達を構成する学習のあり方や倫理観,社会的能力や肯定的なアイデンティティなどの内面的要素」と定義づけ,青少年のよりよい発達は,青少年自身にこれらの発達資産がより多く蓄積されることで実現すると説明する。
 この概念は,これまで本研究グループが一貫して注目してきた生活体験を豊かに生み出すための基盤となる環境や内面の資源をさす概念として着目でき,現代の子どもと親に発達資産としての生活体験がどのように蓄積しているかを把握するとともに,≪学び―生活体験―発達資産≫の構図を解明することこそ,本研究の到達点となる。

【主要参考文献】

  • 立田慶裕・岩槻知也『家庭・学校・社会で育む発達資産―新しい視点での生涯学習―』北王路書房,2007年
  • 国立教育政策研究所「子どもの成長過程における発達資産についての調査研究報告書」2005年

© 子どもと親の学びを生み出す発達資産としての生活体験を育む「地域家庭教育支援」

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